漫才の相方の選び方

漫才の作り方

M-1グランプリの規定によれば、2人以上であれば人数制限はないようです。ですのでピン芸人がひとりで出場することは認められていませんが、3人や4人のグループでもOKということです。しかしながら、2024年大会までにおいて、決勝に進出した3人以上のグループは今のところ存在しません。有名どころですと”第7世代”としても人気を博した「四千頭身」などがいますが、トリオの難しさというのはあるのかもしれません。私見ですが、M-1グランプリの特性上、ネタ時間も限られていますし、”3人でなければいけない必然性”とネタ時間の兼ね合いという問題をクリアするのは至難の業なのだと思います。
ということで、本書においてはスタンダードな2人のコンビによるネタ作りを想定して解説していきます。3人以上での出場を目指している方には申し訳ありません。とはいえ、3人いるからといって、コンビによる漫才の作り方から大きく逸脱するということでもありませんので、ご参考にしていただける部分は十分あるかと思います。

ピンでは出場できないM-1グランプリですから、相方選びは必須の作業となります。ですがこの本を手に取ってくださっている方の中には、すでに相方が決まっている方もいるでしょう。そのような方は読み飛ばしていただいて構いません。もし、これから決めるという場合にどのような基準で選んだら良いのかを考えてみたいと思います。
一番は「笑いのツボが合う」。これに尽きると思います。様々なタイプの芸人がいますが、笑いに正解はありませんから、それぞれ好きなタイプのお笑いというのがあると思います。その趣味が全然合わない同士で組んでしまうと、ネタを作ったり改良していく作業のなかでどうしても衝突が起きかねません。そして、実際に漫才をやる段になった際の役割分担も踏まえて、話す中でボケとツッコミに自然と分かれるような知り合いがいたら、ベストなのだと思います。どっちがボケをやるかを話し合うまでもないですし、自然な感じが出やすいです。
次に考えるべきは、ビジュアル面です。アマチュアの方の場合、当然ながら普段の仕事に支障が出るような髪型や髪色にするのは困難だとは思いますが、プロの芸人さんは、ビジュアル面の工夫も戦略的にされている方が多いと思われます。


例えば、2024年決勝メンバーで言えば、「トム・ブラウン」「ジョックロック」「真空ジェシカ」の3組は、共にコンビの内の1名が特徴的な長髪です。「お客さんに名前と顔だけでも覚えてもらいたい」「インパクトを残したい」というような目的でビジュアル面を工夫するものと想像されますが、それ以上に、「ぱっと見で二人を区別できるようにする」という狙いも大きいでしょう。体重200キロに迫る規格外の大きさで知られる大鶴肥満さんを擁する「ママタルト」については、一度見たら誰もがわ誰もが忘れないビジュアルでありながらも、肥満さんは特徴的なピンクのジャケットを着て、衣装面でもツッコミの檜原さんと全然違う印象を演出しています。背丈がほぼ一緒の真空ジェシカのふたりについては、長髪と金髪という違いで、どちらがどちらかを覚えてもらいやすい工夫をしています。ジョックロックの福本さんの口髭に長髪、ゆうじろーさんのリーゼントも同じような理由でしょう。やはり大量の芸人さんがいる中で、「一目で印象に残る」ということに相当な重きを置いているのだと考えられます。
アマチュアの方が必要以上にビジュアル面の工夫をするのも大変だと思いますから、できる範囲でよいでしょう。しかしながら、限られた時間の中で、初見の審査員やお客さんの前で「どっちがボケなのか」が瞬時で分かりやすいような見た目にすることはメリットとして働く可能性が高いので、覚えてもらいやすい工夫をするというのは得策です。

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