相方が決まったらいよいよネタを考えていきましょう。とはいえ、いきなり0から考えても、何から手を付けてよいのか分からないという方もいると思います。まずは、大まかな方向性から練っていくのが良いでしょう。
漫才には、大きく分けて2つの種類があると言われています。「しゃべくり漫才」と「コント漫才」です。もちろん、厳密な定義があるわけではありませんので、違う考えの方もいると思いますし、「コント漫才」をさらに「コント漫才」と「漫才コント」に分ける考え方もあるようです。本書では、ざっくりと「しゃべくり漫才」と「コント漫才」にわけて考えていきます。
「しゃべくり漫才」とは、ボケとツッコミの2人が、素の状態のまま自然な会話を繰り広げていくものです。ここでいう「素」とは、「本音」というようなニュアンスではなく、舞台上に登場した漫才師がそのままの人格で話をしていく、といったイメージです。2024年のM-1グランプリを例に出すと、令和ロマンの1本目が「しゃべくり漫才」に該当します。
「まわりの知人が結婚とかし始めてるから、そろそろ結婚して子供でもほしい」みたいなテーマで二人の会話が始まり、”渡辺最強説”を展開していくというネタでした。このネタの中では、くるまさんとケムリさんの二人はあくまで令和ロマンの二人としてネタが進んでいきます。厳密には、くるまさんが”渡辺君”を一瞬演じてみせたりしますが、それはあくまでイメージしやすくするために演じているのであって、完全に”渡辺君”になりきっているわけではありません。
私の説明が拙く、うまく理解できないという方もいるかもしれませんので、「コント漫才」の例も紹介しましょう。同じく24年M-1グランプリで言うところの、ヤーレンズのネタが分かりやすいのではないかと思います。
23年に惜しくも2位に敗れたヤーレンズは、漫才の構造としては23年と大きく変えずに勝負してきました。ざっくり、次のような流れです。
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~出だしの、本題に入る前のボケなどは割愛~
出井(ツッコミ)「最近、●●をしてみたいと思ってるんだけど」
楢原(ボケ)「でも●●って、▲▲とかが大変そうじゃない?」
出井「大丈夫でしょ!!」
楢原が演じる店員「いらっしゃいませ~!!」
出井が演じる客「あの~。◆◆を探してるんですけど、、、」
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ネタをご覧になった方であればイメージしやすいかと思いますが、冒頭の掛け合いの後に、「大丈夫でしょ!」というお決まりのセリフを挟んで、「コントパート」に突入するのがヤーレンズ定番のパターンです。
「大丈夫でしょ!」の後に登場する人物は、出井さんと楢原さんが演じている漫才の中の登場人物であり、出井さん・楢原さんからは完全に独立した人格です。ですので、その部分だけ切り取ると実質的にコントになっているのです。これが「コント漫才」と言われるネタの種類となります。
なんとなくイメージできましたでしょうか?
「しゃべくり漫才」と「コント漫才」、どちらが優れているとか劣っているとかそういうことはありません。審査員によって好みはあるかもしれませんが、何よりも楽しくM-1に出ようと考えている皆さんにとって、優劣を深く考える必要はないと思います。まずは、大まかに2種類の漫才の違いを理解いただき、自分たちに合ったものを取り入れていただければと思います。では、次からは2種類の漫才のそれぞれのメリット・デメリットなどを詳しく考えていきましょう。
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